浄化槽補助金の申請代行は設置業者がしてもいい?行政書士法との関係

こんにちは。茨城県結城郡八千代町の行政書士、くぼやです。

合併処理浄化槽を設置するとき、市町村の補助金を利用できることがあります。

補助額が数十万円になることもあるため、設置する方にとっては重要な制度です。

実際の工事では、浄化槽の設置業者から、

「補助金の申請もこちらでやっておきます」
「申請手続きは工事代金に含まれています」

と案内されることもあるようです。

利用者にとっては便利なサービスですが、ここで一つ疑問があります。

浄化槽の設置業者が、依頼者に代わって補助金申請書を作成することに、法律上の問題はないのでしょうか。

浄化槽補助金の申請者は誰なのか

市町村の浄化槽設置補助金は、通常、浄化槽を設置する住宅の所有者や居住者などが申請者になります。

浄化槽工事を行う施工業者が、自社の補助金として申請するものではありません。

つまり、施工業者が申請書を作成する場合には、施工業者自身の書類ではなく、施主である「他人」の申請書を作成することになります。

そして、補助金交付申請書は、市役所や町村役場に提出する書類です。

行政書士法上の「官公署に提出する書類」に当たると考えるのが自然でしょう。

官公署提出書類の有償作成は行政書士業務

行政書士法では、行政書士は、他人の依頼を受け、報酬を得て、官公署に提出する書類を作成することを業とすると定められています。

また、行政書士または行政書士法人でない者は、他の法律に特別な定めがある場合などを除き、これらの業務を行うことができません。

したがって、浄化槽の設置業者が施主の依頼を受け、対価を得て補助金交付申請書を作成している場合には、行政書士法との関係が問題になります。

申請者本人が最後に署名したからといって、それだけで問題がなくなるとは限りません。

実際に誰が申請内容を判断し、誰が書類を作成したのかが重要です。

「申請代行無料」なら問題ないのか

行政書士法が問題となるのは、他人の依頼を受け、報酬を得て、業として書類を作成する場合です。

そのため、

「申請代行料はもらっていない」
「無料サービスとしてやっている」

という説明がされることもあります。

しかし、2026年1月1日に施行された改正行政書士法では、「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という表現が加えられました。

申請代行料という項目を別に設けていなくても、工事代金、諸経費、手数料、商品代金などに申請書作成の対価が含まれている場合には、行政書士法上の問題を避けられるとは限りません。

「無料と書いておけば大丈夫」という単純な話ではないということです。

委任状があれば設置業者でも作成できる?

市町村によっては、本人以外が補助金申請書を提出する場合に、委任状の添付を求めています。

しかし、委任状は、本人に代わって書類を提出したり、通知を受け取ったりするための代理権を示す書類です。

委任状を受け取ったからといって、行政書士でない者に官公署提出書類を有償で作成する資格が生じるわけではありません。

「窓口に持参すること」と「申請書を作成すること」は、分けて考える必要があります。

完成した申請書を単に役所へ届けるだけなのか、それとも申請内容を判断して書類を作成し、不備の補正や役所との協議まで行っているのかによっても、評価は変わります。

設置業者が作成できる書類もある

設置業者が浄化槽補助金に一切関与できないということではありません。

補助金申請には、例えば次のような資料が必要になります。

・浄化槽設置工事の見積書
・浄化槽の配置図や配管図
・設置する浄化槽の仕様書
・登録証や保証登録証
・浄化槽設備士証の写し
・工事中の写真
・施工状況を確認するチェックリスト

これらは、施工業者が自ら行う工事や、自社が取り扱う製品に関する資料です。

施工業者が自社の業務として見積書や施工図、工事写真などを作成し、施主に提供することは、施主の補助金申請書を代わりに作成することとは性質が異なります。

問題になるのは、施工業者が技術資料を提供するだけでなく、施主名義の交付申請書や実績報告書を作成し、提出や補正まで一括して有償で行っている場合です。

浄化槽設備士なら申請代行もできる?

浄化槽設備士は、浄化槽工事を適正に施工するために設けられた国家資格です。

浄化槽工事業者が設置工事を行う場合には、原則として浄化槽設備士による実地の監督が必要になります。

しかし、浄化槽設備士の資格は、浄化槽の設置工事や施工監督に関する資格です。

浄化槽設備士であることを理由として、施主名義の補助金交付申請書を有償で作成できるという特別な規定は、確認した範囲では見当たりません。

工事についての専門資格と、官公署提出書類を作成する資格は、別に考える必要があります。

業界の慣行と法律上の整理は別問題

浄化槽工事の業界では、設置業者が補助金申請に必要な書類をまとめ、役所へ提出する運用が以前から行われている地域もあります。

市町村の担当者も、設置業者が書類を持参することを前提に対応している場合があります。

しかし、役所が書類を受け付けていることと、その作成行為が行政書士法上適法であることは、同じではありません。

市町村の補助金担当課は、提出された書類の内容や補助要件を審査する部署です。

書類を作成した者が行政書士法に違反しているかどうかを、その受付窓口が毎回判断しているわけではありません。

長年行われてきた業界慣行であっても、それだけで法律上の根拠になるわけではない点には注意が必要です。

どこから行政書士に依頼すべきか

浄化槽工事の技術的な内容は、設置業者に確認する必要があります。

一方、施主名義の補助金交付申請書、変更承認申請書、実績報告書、補助金請求書などの作成や提出代理については、行政書士への依頼を検討すべき分野です。

実際の手続きでは、次のような分担が考えられます。

・設置業者が見積書、図面、仕様書、工事写真などを作成する
・行政書士が補助金の要件と提出期限を確認する
・行政書士が施主名義の申請書や実績報告書を作成する
・行政書士が市町村への提出や補正対応を行う
・設置業者と行政書士が工事日程や必要資料を共有する

設置業者と行政書士が対立する必要はありません。

工事の専門家と行政手続きの専門家が役割を分担することで、施工業者の負担を減らし、申請者にとっても適正で確実な手続きにつながります。

まとめ

浄化槽設置補助金の交付申請書は、市町村へ提出する官公署提出書類です。

浄化槽の設置業者が、施主の依頼を受け、工事代金などの対価を得ながら申請書を作成している場合には、行政書士法上の問題が生じる可能性があります。

一方で、設置業者が自社の見積書、施工図、仕様書、工事写真などを作成し、申請者へ提供することまで問題になるわけではありません。

重要なのは、

「誰の名義の書類を」
「誰が内容を判断して作成し」
「どのような対価を受けているのか」

を分けて考えることです。

なお、浄化槽補助金の申請代行に限定した裁判例や行政機関の明確な統一見解は、確認した範囲では見当たりません。

個別の行為が行政書士法に違反するかどうかは、実際の契約内容や書類作成への関与の程度などを踏まえて判断されます。

行政書士くぼや事務所では、浄化槽設置補助金をはじめ、市町村へ提出する補助金申請書類の作成についてご相談を承ります。

設置業者様からのご相談や、申請者様・設置業者様と連携した手続きにも対応します。


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