
家の裏や道路沿いにある「斜面(法面)」や「擁壁(ようへき)」。
普段は気にも留めない場所ですが、いざ崩れたり補修が必要になったりすると「これ、うちの土地?」「市のもの?」と困るケースが多いものです。
この記事では、行政書士の立場から、法面・擁壁の所有と管理責任の考え方をわかりやすく整理します。
法面(のりめん)とは?

法面とは、道路や造成地などで土地を安定させるために作られた傾斜面のことです。
コンクリートやブロックで覆われていることもありますが、草地のままの場合もあります。
造成地では、
- 道路と宅地の間
- 隣地との高低差部分
などに多く見られます。
擁壁(ようへき)とは?
擁壁は、高低差のある土地を支えるための“壁”構造物です。
鉄筋コンクリート造・ブロック造・石積みなど様々な形があり、宅地造成等規制法の基準を満たす必要があります。
法面が「斜面」だとすれば、擁壁は「壁」です。
法面・擁壁は誰のもの?
一番のポイントは、「どの土地を守るためのものか」で所有者が変わるということです。
● 原則:守る側の土地所有者に帰属
擁壁や法面は、上側の土地(盛土側)を支えるための構造物である場合が多く、原則として上側の土地所有者の所有物です。
つまり、
- 道路と宅地の間にある法面 → 多くは宅地所有者の管理
- 隣地との間の擁壁 → 上側(高い方)の土地所有者のもの
となるのが一般的です。
例外:道路法上の占用になる場合も
ただし、法面や擁壁の一部が道路用地内に入り込んでいる場合は話が変わります。
このようなケースでは、
- **道路法第32条(工作物占用)**の許可が必要
- 無断で設置している場合、「無許可占用」とみなされる
といった扱いになることがあります。
行政上の扱いとしては、**「構造物承認」や「占用許可」**が必要になる場合があり、宅地造成時にきちんと図面承認を受けているか確認が必要です。
役場の道路管理部門に在籍していた際、道路の境界確認をすることが多々ありました。
実際に測量してみると、法面が道路上である場合・そうでない場合の両方のケースがあります。
(古い住宅を建て替える際などは注意が必要です)
管理責任はどうなる?
法面や擁壁が崩れた場合、次のような考え方になります。
- 自分の土地を守るための擁壁 → 自分で管理責任あり
- 道路側の擁壁 → 行政(道路管理者)が管理)
- 共有の擁壁 → 関係者で協議・費用負担
もし崩落などで第三者に損害を与えた場合、民法第717条(工作物責任)が適用され、所有者や管理者が損害賠償責任を負うこともあります。
トラブルの多いケース
- 古い開発団地で、道路と宅地の間の擁壁が誰のものか不明
- 造成時の図面が残っておらず、境界確定ができない
- 宅地の擁壁が道路に越境していて、占用許可がない
- 相続で土地を分筆したら、擁壁が共有扱いになっていた
このようなときは、法務局の地積測量図や役所の道路台帳、造成時の開発許可図面を照合して確認する必要があります。
行政書士ができるサポート
行政書士は、次のような場面でお手伝いできます。
- 道路占用・構造物承認の手続き
- 市町村との占用境界協議
- 現況図・平面図の作成
- 擁壁の所有・管理関係の整理文書の作成
- 相続や売買に伴う境界説明書の添付資料作成
法面や擁壁の扱いは、単に「どっちの土地か」ではなく、法的・行政的な境界も関わるため、慎重な確認が必要です。
まとめ
法面や擁壁は「目に見えない境界トラブル」の代表格です。
見た目ではわかりづらくても、法的には「どの土地を守るか」で所有や責任が変わります。
もし、
- 擁壁が道路にかかっている
- 修繕費を誰が負担すべきかわからない
といった場合は、行政書士や土地家屋調査士に相談するのが安心です。
手続きは平日しかできないことも多くあります。
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